財務省から令和6年度の国民負担率が公表されました。

国民負担率は租税負担率と社会保障負担率を合計したもので,令和6年度の国民負担率の推計は45.1%と,令和5年度から1%下がる見通しです。令和4年度と比較すると3.3%下がっています。

統計上は国民の所得が伸びているため負担率が下がっているようです。

令和6年度の国民負担率の内訳は,租税負担が26.7%(国税が16.9%,地方税が9.9%),社会保障負担が18.4%となっています。また,過去のデータと比較してみると,昭和45年度(24.3%),平成元年(37.9%),令和元年(44.2%)と,国民負担率はじわじわと増加傾向にあることがわかります。

財務省「令和6年度の国民負担率を公表します

ここで注意が必要なのは,この数字は国民所得から計算されており,また,法人税や会社負担の社会保険料などが含まれている点です。

それでは,もう少し私たちに近い視点で計算してみるとどのくらいの負担率になるのでしょうか?

フリーランス等の個人事業主で,売上高に対する経費の割合が30%程度の人がどのくらいの負担率になるかをざっくり推計してみたのが以下の表です。青色申告特別控除を差し引く前の事業所得(もうけ)に対する負担率について,租税負担率は所得税・住民税・事業税を,社会保障負担率は国民年金保険料・国民健康保険料をもとに計算しています(消費税はもうけに対してかかる税金ではないため,消費税は計算に入れていません)。

負担率の計算にはさまざまな要素が絡んでくるため,正確な負担率を推計しているわけではありませんが,あくまで「これくらいもうけから税金などを払っているんだ」という感じでみてみてください。

年商700万円年商1,400万円年商2,100万円
租税負担率16%25%32%
社会保障負担率14%11%8%
(合計)30%36%40%
フリーランス等の租税負担率と社会保障負担率

国民健康保険料などは所得(もうけ)に応じて負担する保険料が増えますが,上記の表で社会保障負担率が年商と反比例しているようにみえるのは,国民年金保険料が定額であるのと,国民健康保険料に上限金額があるためです。
近年,この国民健康保険料は上限金額の引上げが毎年のように行われています。

また,租税負担率も所得(もうけ)に応じて負担する税額が増えます。基礎控除と社会保険料控除だけで推計した所得(もうけ)に係る所得税率を考えてみると,上記の年商700万円のケースでは所得税率20%,年商1,400万円のケースでは所得税率23%,年商2,100万円のケースでは所得税率33%となります。所得税の最高税率は45%ですが,国民健康保険料のように金額の上限が設けられているわけではありません。「個人事業主は稼いだら稼いだだけ税金がかかる」と言われることが多いのはこのためですね。

実際の計算では,国税庁の資料のように,所得税率だけでなく控除額も用いて計算するのですが,上記のように住民税や事業税も合わせた負担率をみるとなかなか大きな数値です。本コラムの計算では考慮に入れていませんが,インボイス事業者の場合はさらに消費税の負担も生じるわけですから,もうけの3〜4割以上が租税や社会保障のために費やされることになります。財務省の公表する国民負担率は,会社だけでなくフリーランス等の個人事業主にとっても,決して他人事ではないのです。

このような数字をみてみると,フリーランス等の個人事業主も,青色申告などの特典を活用したり,年商や所得によっては法人化も視野に入れるなど,適正な範囲でお金の自衛をしていくことの大切さを感じてしまいますね。

国税庁「所得税の税率

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